青藍メモ

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令和元年司法試験予備試験論文式試験の答案を晒すブログです。

商法 令和元年司法試験予備試験論文式試験

はじめに

青藍です。

予備試験の短答式試験・論文模試の結果と論文本試験の結果との相関関係について探るべく、私の再現答案を晒します。

短答・論文模試の結果等

総合

短答 191点(法律158、教養33、340番台)

塾 260番台/602人

辰巳 90番台/311人

商法

短答 20点

塾 320番台/602人

辰巳 70番台/311人

再現答案(3.7枚)

第1 設問1

 Dとしては、取締役からの解任を目的とする臨時株主総会の開催が法令に違反するとして、会社法(以下、法名略)360条1項に基づき、臨時株主総会の開催を差し止め、その中で本件取締役会決議の効力を争うことが考えられるが、これは認められるか。

1 甲社は、種類株式発行会社ではなく、その定款には、譲渡による甲社株式の取得について甲社の取締役会の承認を得る旨の定めがあるため、2条5号の「公開会社」にあたらず、「公開会社でない株式会社」として360条2項の適用がある、また、甲社ではFが監査役を務めており、甲社は「監査役設置会社」(2条9号)にあたるので、360条3項の適用がある。以上を前提に検討する。

2 Dは、甲社の株式を有しており、「株主」(360条2項、1項)にあたる。

3 甲社は取締役会設置会社であるため、株主総会の招集の決定においては、取締役会の決議によらなければならない(298条4項、同条1項)。

(1)ここで、瑕疵ある取締役会決議が無効であるとすると、本件の臨時株主総会の招集は取締役会決議を欠くこととなり、298条4項という「法令」の違反があるといえる。ここで瑕疵ある取締役会決議の効力が問題となる。

 株主総会決議の無効事由が法定されている一方(830条1項、2項)、瑕疵ある取締役会決議の効力が定められていないのは、法はこれを一律に無効とする趣旨と解される。したがって、瑕疵ある取締役会決議は無効となる。

(2)本件取締役会決議の瑕疵の有無について検討する。Cは、Dが本件取締役会の決議について特別の利害関係を有することを理由に、Dを議決に参加させておらず、これは369条2項の「特別の利害関係を有する取締役」を根拠とすると解される。

 ここで、369条の趣旨は、決議に対し不当な影響を与えるおそれのある者が決議に参加することにより、取締役会における社会経済上健全な意思形成が阻害されるのを防止する点にある。とすると、このようなおそれのない者であれば、369条2項の「特別の利害関係を有する取締役」にあたらない。

 甲社において、CとDは経営方針をめぐって対立しており、Cは、Dを甲社の経営から排除しようという個人的な事情の下、Dを解任しようとしている。そして、Dも甲社の取締役であるため、甲社の経営方針や自己の選解任について意見を述べることができる。とすると、Dを決議に参加させても、取締役会における社会経済上健全な意思形成が阻害されるおそれがあるとはいえない。また、Dが決議に参加し意見を述べていれば、Eも翻意してDの解任に反対した可能性も否定できない。

 したがって、Dが「特別の利害関係を有する取締役」にあたらず、Dを排除して行われた本件株主総会決議は瑕疵あるものとして無効となる。

(3)とすると、本件の臨時株主総会決議の招集は、取締役会決議を欠くものとして298条4項に反し、「法令」に違反する行為をするおそれがあるといえる。

 

3 それでは、甲社に「回復することができない損害」(360条3項、1項)が生ずるおそれがあるといえるか。

 Cは、その経営手腕の未熟さにより、甲社に多額の損失を生じさせている。そして、本件臨時株主総会が開催され、Dが解任されると、Cを止める者がいなくなり、甲社の損失は拡大しそうである。しかし、これは金銭賠償が不可能とはいえず、「回復不可能な損害」にあたらない。

4 よって、Dの請求は認められない。

第2 設問2

 Dとしては、丙社が取得した甲社株式40株について議決権の行使を認めずに行われた本件株主総会決議は、決議の方法に法令の違反があるとして、831条1項1号に基づき、本件株主総会決議の取消しの訴えを提起することが考えられるが、これは認められるか。

1 Dは甲社株式を有しているので、「株主等」にあたる。

2 「決議の方法」に「法令」の違反があったといえるか。甲社の定款では甲社株式の取得について甲社の取締役会の承認を要する旨の定めがあり、丙社が本件会社分割により承継した甲社株式40株については、取締役会の承認を得ていないため、丙社は甲社株主としての地位を甲社に対抗できないのではないか、問題となる。

 株式の譲渡制限の趣旨は、会社の経営に好ましくない者を排除する点にあるところ、丙社は既存株主であるDが全株式を有し、代表取締役を務める会社であり、丙社を株主として認めても、会社経営上好ましくない者が株主になるわけではない。それにもかかわらず、Cは丙社に対し株主名簿の名義書換を拒絶しており、これは不当拒絶にあたる。

 したがって、本件株主総会決議において丙社の有する株式につき議決権の行使を認めなかったことは、法309条1項に反し、「決議の方法」の「法令」違反が認められる。

3 よって、Dの請求は認められる。 以上

現場での思考

「公開会社」「監査役設置会社」「株主」など、論点にもならない前提事実につき、ねちっこく条文をあげるように心がけました。

設問1

問題文を見て、「解任される取締役は「特別利害関係人」にあたるのが判例では…?」と思いました。それを前提とすると、本件取締役会決議に瑕疵はなく、Dの請求は認められないことになりそうです。

しかし、そのように解してしまうと、360条における各要件該当性について論じる実益がなくなり、書くことがなくなってしまうと思いました。

そこで、答案政策上の理由により、Dは「特別の利害関係を有する取締役」にあたらないとするべく、もがき苦しみました。論証について乱暴になってしまい、説得力のある答案とはいえないと思えます。

設問2

名義書換の拒否が不当拒絶にあたることを論ずるにあたり、株主名簿の名義書換にまつわる関連条文などを丁寧にひくべきでした。また、時間が厳しくなってしまい、あてはめが充実していません。三段論法もできていません。

設問1、設問2を通じて、本件が「小規模閉鎖会社におけるお家騒動」であるという事情をうまく答案に活かせなかったのが残念です。