青藍メモ

青藍メモ

令和元年司法試験予備試験論文式試験の答案を晒すブログです。

刑事実務 令和元年司法試験予備試験論文式試験

はじめに

青藍です。

予備試験の短答式試験・論文模試の結果と論文本試験の結果との相関関係について探るべく、私の再現答案を晒します。

短答・論文模試の結果等

総合

短答 191点(法律158、教養33、340番台)

塾 260番台/602人

辰巳 90番台/311人

刑事実務

塾320番台/602人

辰巳 220番台/311人

再現答案(3.0枚)

第1 設問1

1 「裁判所は、…罪障を隠滅すると疑うに足りる相当の理由があるとき」は、被告人(本問では、被疑者)の接見等を禁止することができる(刑事訴訟法(以下、法名略)207条1項、81条1項)。ここで、「罪障を隠滅すると疑うに足りる相当の理由があるとき」の判断は、被疑者の態度や罪証隠滅の動機の有無等を考慮して決する。

2 Aは、⑧Aの警察官面前の弁解録取書において、「私はやっていない」と本件被疑事実を否認している。また、⑨Aの前科調書によると、Aは、平成30年に傷害罪で懲役刑に処せられ、3年間の執行猶予に付された旨が記載されている。本件の被疑事実についてAが有罪判決を受けた場合、刑の執行猶予の必要的取消し(刑法26条1号)を受ける可能性が高い。とすると、Aは本件被疑事実について罪証隠滅を行う動機がある。

 このようなAの否認という態度及び罪証隠滅の動機がある点を考慮すると、Aには「罪障を隠滅すると疑うに足りる相当の理由」があるといえる。以上が裁判官の思考過程である。

第2 設問2

 ③記載のWの警察官面前調書は直接証拠にあたるか。直接証拠とは、公訴事実として記載された具体的事実が被告人によって行われたものであることを直接証明する証拠をいう。以下、A及びBそれぞれについて検討する。

1 Aについて

 ③によると、犯人のうちの1人である「黒色キャップの男」の顔は、キャップのつばの陰になって見えなかった。そのため、「黒色キャップの男」がAであることを直接証明するに至らないから、③はAが犯人であることを直接基礎付ける直接証拠とはならない。

 もっとも、後述するように③はBとの関係では直接証拠になる。そして、犯人であるBと一緒にいた「黒色キャップの男」は、Bと付き合いのある人物であるAであることが、経験則上推認される。したがって、③はAが犯人であることを経験則上推認させる間接証拠となる。もっとも、Aが以外の人物である可能性も否定できないため、その推認力は弱いといえる。

2 Bについて

 犯人のうち、「茶髪の男」について、Wは街灯の明かりもあり、「茶髪の男」の顔をよく見えたと述べている。そして、Wは警察官から20枚の男の写真を見せられ、2番めの写真の男が「茶髪の男」に間違いないと述べた。そして、その写真の男はBであった。このことから、犯人のうち「茶髪の男」はBと同一人物であると認定でき、③はBとの関係では直接証拠にあたる。

第3 設問3

1 Aの弁護人としては、Aが「傘の先端でその腹部を2回突いた」ことについて否認の主張をすべきである。即ち、Aの持っていた傘の先端がVのの腹部にあたったのは、故意によるものではなく、Vのからいきなり肩をつかまれ驚いて勢いよく振り返ったからであり、これは偶然によるものだと主張する。

2「足でその腹部及び脇腹等の上半身を多数蹴る暴行を加え」たことについては正当防衛(刑法36条1項)の主張をすべきである。即ち、Aがかかる行為に及んだのは、VのがAに対し手拳で殴りかかってきたからであり、Aは、自己の身体を守るためやむを得ずにかかる行為に及んだと主張する。

第4 設問4

 下線部㋒に関し、Aの弁護士が無罪を主張したことについて、Aの弁護士はAのから本件被告事件にかかる公訴事実について自分がやったと打ち明けているため、弁護士職務基本規程(以下「規程」という)5条の真実義務に反しないか問題となる。

 しかし、「弁護人は、被疑者および被告人の防御権が保障されている点に鑑み、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める」とされており(規程46条)、また、犯罪事実の立証をするのは検察官の役目であるから、かかる場合に無罪の主張をしても、真実義務に反するものでなく、弁護士倫理上の問題はない。

第5 設問5

 検察官が取調べ請求をしようと考えた証拠は、⑫Bの検察官面前の弁解録取書である。弁護人が不同意とした場合、321条1項2号を根拠に、㋓の供述が「Aが何をしていたか見ていない」とする点で⑫と「実質的に異なった供述をした」として、⑫を証拠とすることができる。 以上

現場での思考

全体を通して、あてはめが薄くなってしまったのが残念です。

また、設問2において、③記載のWの警察官面前調書がAの犯人性を基礎づける間接証拠になるのではないかと考えましたが、その推認力の強弱の認定について悩みました。Wの調書単体では、「黒色キャップの男」はA以外の別の人間の可能性も否定できない一方で、問題文中の他の証拠も合わせて検討すると、「黒色キャップの男」は普通に考えてA以外にあり得ないだろうと思ったからです。

問題文には、「直接証拠にあたらない場合は、同供述録取書から、前記暴行に及んだのがAであること…がどのように推認されるか」とあり、供述録取書単体で判断すべきなのか、それとも他の証拠も併せて判断してもよいのか、わからなくなってしまいました。