青藍メモ

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令和元年司法試験予備試験論文式試験の答案を晒すブログです。

民法 令和元年司法試験予備試験論文式試験

はじめに

青藍です。

予備試験の短答式試験・論文模試の結果と論文本試験の結果との相関関係について探るべく、私の再現答案を晒します。

短答・論文模試の結果等

総合

短答 191点(法律158、教養33、340番台)

塾 260番台/602人

辰巳 90番台/311人

民法

塾80番台/602人

辰巳 80番台/311人

再現答案(3.5枚)

第1 設問1

 DはCに対し、本件土地の所有権(民法(以下、法名略)206条)に基づく建物収去土地明渡請求をすることが考えられるが、これは認められるか。①原告所有、②被告占有が要件となるため、以下検討する。

1 ①原告所有

 平成20年4月1日以前において、Aが本件土地の所有権を有していたことにつきDC間に争いないと思われ、この点で権利自白が認められる。

 そして、平成28年3月15日にAは「死亡」し、相続が開始した(882条)。そして、Bは相続人たるAの「子」であり、唯一の「相続人」である(887条1項)。「相続人」たるBは「相続開始の時から、被相続人に属した一切の権利義務を承継する」(896条)ので、Bは、Aから高土地の所有権を承継したといえる。

 平成28年6月1日、Bは、本件債務の担保のため、Dを抵当権者として抵当権(369条1項)の設定をした。平成29年3月1日、Dは、本件土地について抵当権の実行として競売の申立てをし、Dは自ら本件土地を950万円で買い(555条)受けた。

 したがって、Dは本件土地を所有しており、①原告所有の要件をみたす。

2 ②被告占有

 Cは、本件土地上にCを所有権者とする所有権の保存登記がされた本件建物を建築し、これに居住しているので、本件土地を事実上支配しているといえ、②被告占有の要件をみたす。

 したがって、DのCに対する請求は認められそうである。

3 ここで、Cは自己が177条の「第三者」にあたり、Dが対抗要件を備えるまで、Dを本件土地の所有者として認めないと主張する。

 177条の「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう。

 平成20年4月1日、AはCに本件土地を贈与(549条)しており、同日、本件土地はCに引き渡されているため、贈与の不可撤回効(550条但書)も生じている。そのため、Cは本件土地の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者であり、177条の「第三者」にあたる。

 しかし、Dは、平成29年12月1日、本件土地についてDへの所有権移転登記を経ており、対抗要件を備えている。したがって、Cの主張は認められない。

4 そこで、Cのとして法定地上権(388条)が成立するとして、本件土地の占有権原があると主張する。

 しかし、法定地上権の成立には「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合」である必要があるところ、Cは本件土地の所有権をDをに対抗できないのは先述の通りであるから、「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合」にあたらず、法定地上権は成立しない。

5 そこで、Cは本件土地についてBとの間で黙示の賃貸借契約(601条)が成立しており、これは建物所有を目的としたものであるから、借地借家法2条1号の「借地権」にあたり、同法10条1項により、本件土地上に登記済みの本件建物を所有するCは自己の借地権をDに対抗できると主張する。

 しかし、賃貸借契約の成立には「賃料」支払いの合意が必要であるところ、BC間でそのような合意がされた事情は見当たらず、黙示の賃貸借契約は成立しない。これはCD間でも同様であり、Dが本件土地を対抗力のある借地権があるものとしてその担保価値を評価したことは、結論に影響を及ぼさない。

 したがって、Cの反論は認められない。

6 以上より、DのCに対する請求は認められる。

第2 設問2

 CはDに対し、本件土地の所有権(206条)に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記の抹消登記手続請求をすることが考えられるが、認められるか。①原告所有、②被告占有が要件となるため検討する。

1 ①原告所有

 平成20年4月1日、AはCはに対し本件土地を贈与(549条)しており、①原告所有の要件をみたす。

2 ②被告占有

 Dは本件土地上にD名義の抵当権設定登記を有しており、②被告占有の要件をみたす。したがって、Cの請求は認められそうである。

3 ここで、Dとしては、自己が177条の「第三者」にあたり、Cの本件土地の所有権移転登記に先立ち抵当権設定登記を備えているので、DはCはに対し本件土地に対する抵当権を対抗できると主張する。

 177条の「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいい、Bから本件土地の抵当権の設定を受けたDは、これにあたる。そして、Dは、Cはに先立つ平成28年6月1日に本件土地に抵当権設定の登記を経ている。したがって、Dは、本件土地に対する抵当権をCに対抗できる。

4 よって、CのDに対する請求は認められない。 以上

現場での思考

全体を通じて、贈与、相続、抵当権、売買などの前提となる事実関係及び法律関係についてねちっこく条文をあげることを心がけました。

設問1

現場では、「Cの占有権原無くね…?」と焦りました。

法定地上権についても一応ふれてはみたものの、「CはDに所有権を対抗できないのだから法定地上権も成立しない」という、対抗要件原理主義的な形式的判断にとどまっています。

「慎重に本件土地の担保価値を評価したに過ぎないDの犠牲において、Cのために占有権原を認めてもよいのか」という悩みを、答案上に示せればよかったのかなと思います。

黙示の賃貸借の成立については、そもそも配点があるとは思えず、余事記載なのかなと思いましたが、一応触れておくことにしました。

そんなところで貴重な時間を浪費したツケが、設問2において回ってきます。

設問2

取得時効の成立について検討しないという、やってはならないことをやってしまいました。

設問1においては、時効の成立も答案構成段階で検討しました。その先入観により、設問2において年月日の前提条件が異なっていることに気付けないという大失態を犯してしまいました。

この失敗による教訓を深く胸に刻み、今後に生かしたいと思います。